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初心の趣

カメラ初心者が石川県を中心に撮った写真をのんびりと綴っています。

那谷寺には狛犬がいる

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那谷寺(なたでら)へ行った

那谷寺とは石川県小松市にある、高野山真言宗別格本山であるお寺だ。

西国三十三所と呼ばれる観音信仰の霊場が近畿から岐阜にかけてあるのだが、この那谷寺の山にはその三十三箇所がすべて凝縮されていると言われている。

「那谷」と言う名も、西国三十三箇所第一番紀伊那智山と、第三十三版美濃の谷汲山のそれぞれ一字からとって付けられたそうだ。

山門を抜けてすぐ左手にある「金堂華王殿(こんどうけおうでん)」には十一面千手観音も安置されていた。

(※十一面千手観音は撮影禁止だった)

何だか難しい話だけど、とにかく仏教寺院だ。

庶民的に言うと「お寺」だ。

そのお寺に狛犬がいるという。

狛犬=神社というイメージがあるけど、お寺にもいるのだ。

狛犬写真家を自称しようかと目論んでいる自分としては撮りに行かずにはいられなかった。

 

神社があった

那谷寺の山門を抜け、参道をまっすぐ進んでいくと神社が見えてくる。

寺にある狛犬だと思ったら、同じ山に神社があるのだ。

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若宮白山神社

那谷寺は山門をくぐる前に拝観料を払わなければならない。

そのため、この若宮白山神社拝観料を払わなければ参拝できない神社ということになる。

これは全国でも珍しいそうだ。

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拝殿の様子

このように狛犬がいる。それも2対いた。

なるほど、神社があるなら那谷寺に狛犬がいると言っても間違った話ではない。

では、手前の1対から見てみよう。

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手前の阿形の獅子だ

頭がやや大きく、前足も太くて短い。

鼻の頭や横腹に苔が生えているものの、表情が凛々しい。

そのおかげで苔も装飾品のように見えてくる。

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顔のアップ

目に、いわゆる「黒目」にあたるものがない。

格闘ゲームなどで、黒目のない目をしたデザインのいかつい男やボスキャラなどを見かけるが、それに近い。

少なくとも、この狛犬(獅子)はかわいい系ではない。

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爪にも苔

やや劣化も見られるものの、苔とあわせて風雪に耐え抜いた勲章にも見えてくる。

それくらいこの獅子には風格と渋さがあった。

 

この狛犬のような形をしたタイプを「出雲狛犬」と言うらしい。

目や眉がつり上がって耳は垂れ気味、鼻は獅子鼻で大きいのがその特徴だそうだ。

短い顎髭や、前足の太さや短さも出雲狛犬らしさだ。

ただ、正確に分類すると出雲狛犬ではなく「丹後狛犬」となるらしい。

尻を上げて今にも飛びかかろうとしている格好のものこそが本当の出雲狛犬らしく、ポーズ以外同じ特徴であることからこのようにお座りをしているものもひっくるめて出雲狛犬と呼ばれるようになったのだとか。そのようなものでこのお座りの方を「出雲丹後」と呼ぶこともある。

 

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吽形の狛犬

吽形の方にも苔がよく生えている。

そして見ると子連れ狛犬だった。

子連れ狛犬は文字通り子供を連れた狛犬だ。だいたい、メス役である吽形がその足元に子供を連れ、オス役の阿形がその足で毬などを持っているパターンが多い。

こちら若宮白山神社の子連れ狛犬は、そのパターンから外れ、阿形は何も持っていない。かわりに、吽形が連れる子供の狛犬が毬のような丸い玉を抱えていた。

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足元の子供

愛嬌のある顔だ。また、毬を抱える前足の小さがかわいい。

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親と子

親子で同じ方向をむいている。

どうですか、この昭和のスポ根アニメのような絵面。

親子二代で球技に青春と生涯を賭けているように見えてきますよ。

 

もう1対の方も見てみよう。

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もう一対の狛犬

いわゆる出雲狛犬ではない。

耳がたれ、顎に髭もあるが目や眉がつり上がっていない。

腕も細めで胴体も軟そうな印象がある。

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顔も優しいこと

柔和な目元と小さな鼻がまるで子犬だ。

牙すらも愛らしく見えてくる。

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 爪にも攻撃性を感じない

先程の1対は苔だったが、こちらは右の前足あたりに赤い石サビのようなものが見える。こういう経年変化はその狛犬の個性であり、味だ。

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こちらは阿形の獅子

阿形のほうは口を開けているせいか、まだやんちゃ臭さがある。

赤く色づいたところも両足と広範囲に及び、それが勲章とばかりだ。

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爪の様子

 赤みのせいか吽形と比べると爪が鋭いようにも見える。

やはりこれは、対風雪という歴戦の証だ。

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顔のアップは…

何だかひょうきんにも見えるけどね…

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ついでに横顔も

志村けんさんのいやらしい笑い方に近いと思ったのは自分だけだろうか…

 

あとで知ったことなのだが、この神社、他にも境内社として金刀比羅社があったようで、その軒下にも小さな狛犬がいたそうな。

完全に見逃していて家に帰ってから悔やまれた。

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代わりに手水舎の写真をアップ

周りに高い木が多く、木陰になっているせいか、この手水舎はだいたい暗い写真になってしまう。

無理に明るく撮るのも不自然であったため、あえてその特色を活かした。

手水そのものもこの調子で撮る。

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活かしすぎた…

暗すぎて何が何だかだが、雰囲気だけは伝わるはずだ。

 

と、このように那谷寺のある山には神社もあり、そこに狛犬もいたということで「寺に狛犬」という図式もすんなり腑に落ちたことだろう。

自分としても神社があるならそりゃいるよねと、そう思った次第だ。

ところがその納得も、那谷寺の境内を散策し、国から名勝に指定されている景観を観賞してのち、本殿にたどり着いた際に早合点であるとわかった。

 

寺の本殿にも狛犬がいる

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「本殿 大悲閣」の案内板だ

案内のとおり禁煙だ。自分はタバコを吸わない人間なので関係ない。

この案内から本殿へは石段を昇ってたどり着く。

決して緩やかな階段ではない。

崖(岩窟)の途中に本殿が鎮座しているイメージで、一番下にいると天を仰ぐように見上げなくては本殿が見えない。

実際そのように見上げると、本殿より先に目に飛び込んでくるのだ、狛犬が…

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いた!

改めて確認するが、ここは神社ではない。

観世音菩薩の慈眼視衆生の大慈悲心の御誓願より「大悲閣」と名付けられた仏教の拝殿だ。

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寄ってみた

立派な姿だ。

ちゃんと右側に阿形の獅子がいる。出雲狛犬と思われる風貌をして、特徴的なのは口に

玉を咥えていることだ。

口の中の玉については、「世人を惑わしたり傷つけたりする妄言を吐いてはいけない」という意味があるらしい。

この玉を咥えた姿は出雲狛犬でしばしば見られる特徴の一つだそうだ。

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横顔

正面から見てもそうだったが、横から見ても玉が口の真ん中あたりにきている。

なかなか均整の取れたある意味美男子な獅子だ。

狛犬によっては奥歯の方で玉を噛み締めているような個体もあるという。そういうのも個性的で好みなので、いつか見つけ出して撮ってみたい。

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爪もきれい

 顔もイケメンなら爪も整えられている。

意識高い系の獅子かもしれない。

こうなってくると白い斑点のようになった白カビもオシャレ柄に見えてくる。

 

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対する吽形の狛犬

口も閉じて確かに吽形なのだが、こちらの方が顔つきがいかつい。

吽形をメスとするなら恐妻になりえそうな面構えだ。

むしろオスに見えるくらいだ。

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アップにするとますますいかつい

 この男勝りな迫力。口元に攻撃性も孕んでいるようで並の男なら安々と屈していきそうだ。

先程のイケメン獅子も日々尻に敷かれているのだろうかと、そんな想像までしてしまう。

そう考えると、イケメン獅子も急に軟な男に思えてくる。

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改めてここで獅子

外面が恐い妻もデレデレするイケメンか、それとも家の中では妻に頭が上がらない外ではナンパな軟な男か、さてどっちだ?

まあ何にせよ、本殿を背後にナイススマイルだ。

 

ちなみにこの本殿、外から見た限りではわからないが、岩窟内にある。厨子には那谷寺御本尊の十一面千手観音菩薩が安置されていた。

(※中は撮影禁止だ)

狛犬や、本殿と呼ばれていることを考えるといわゆる神仏習合だ。いまさらだが那谷寺は白山信仰の寺なので神仏習合なのだ。

 

まとめ

 那谷寺には、寺でありながら確かに狛犬がいた。

神仏習合白山信仰の寺であることを考えるとごく当たり前のことだった。

今回、神社のものを含め3対の狛犬を写真に収めることができたが、3対で特徴が異なっていて、改めて狛犬には個性があることを確認できた。

本当なら11月頭あたりに出向いて、紅葉をバックに色彩の中の狛犬を撮りたかった。

紅葉のピークを見事に外し、だいぶ散り終えた頃に足を運んでしまったのは自分の普段の天邪鬼ゆえだろう。

その代わりといったらなんだが、先程の神社の時の締めと同じように、本殿近くでも撮れた暗めの写真を上げてみる。

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薄暗くて少し別世界のような気もした

狛犬の写真を撮っているときは心中ワクワクと陽気であったが、この写真を撮ったとき、この那谷寺の厳かさを思い知らされた気がした。

すっかり観光名所になっているここ那谷寺も、やはり信仰深い寺なのだ。

ふざけてはいられない。

反省した自分は、その思い知らされた謹厳を持ち帰るように御朱印も頂いた。

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那谷寺の御朱印

お寺で御朱印を頂いたのはこれが初めてだ。

なんとまあ、力強い字だことか…

御朱印は最初の山門を抜けてすぐ左にある金堂華王殿で頂けます。

 

ただ、その山門から帰る際、入る時には気づかなかった顔はめパネルを見つけた自分は、それを思わず撮った。

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那谷寺の顔はめパネル 

那谷寺オリジナルキャラクターの「なたちゃん」だ。

頭の小さな顔が取り外し可能で、そこが「顔はめ」になる。

かなりゆるいキャラで、顔はめした時に愉快な画になるパネルだった。

そう、すっかり謹厳さも忘れて撮っていた。

厳かな気持ちで終わるつもりがそうならないのもまた、自分の天邪鬼たる所以だろう。