初心の趣

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足湯の旅11 辰口温泉 足湯

仏前で合掌して邪念も雑念もついでにデトックス!の足湯の旅、第11回目だ。

今回は能美市にある辰口温泉に行ってきた。

傍にお寺もある足湯だった。

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能美市にも温泉がある

石川県の南の方の温泉というと加賀市(山中、山代、片山津)や小松市(粟津)を思い浮かべてしまうものだが、能美市にも辰口温泉というところがある。

その名のとおり能美市辰口町にある温泉だ。

辰口町は、当ブログでもよく話題に上げている「いしかわ動物園」がある能美市徳山町の隣町だ。

いしかわ動物園から1kmくらいしか離れていないので、動物園に行ったついでに立ち寄りやすい温泉でもある。

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辰口温泉界隈

途中、足湯と書かれた看板を見かけるので、その矢印に従って曲がれば、足湯の建物も足湯専用の駐車場もある。

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矢印を曲がった先に見える景色

すぐ足湯がある。その左奥に見える「P」と書かれたスペースが専用の駐車場だ。

県内の無料足湯の中には車で行きづらいところもあるけれど、ここはその心配がない。

 

茶室のような足湯

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施設の名前は「辰口温泉 足湯」

「〇〇の湯」といった施設名や愛称はなく、シンプルに「足湯」だ。

この潔さは無駄なものを省く侘び寂びの世界のようで良い。

そう言えば、建物そのものも丸窓があったりして、どこか茶室のような趣がある。

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その丸窓

いぶした竹も使われている。

足を運んだのが夕方のちょうど18時だったので入り込んでくる西日の斜光と影がわびしかった。

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建物の裏に置かれていた掃除用具

端っこにポツンと置かれていた。

理屈やな(石川県の人間がよく使う表現)と思えるほど機能的に置かれているわけでもなく、かといって乱雑に置かれているわけでもないこの地味な佇まいが却って印象に残った。

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中の様子

コの字型に座れる足湯となっていた。

入り口は引き戸になっていて夏は基本的に開けっ放し。

逆に冬や雨風が強い日は閉められるそうだ。

奥にも出入り口が二つあるので、このコの字型の構造でも人の出入りが窮屈になることはないだろう。

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何故かタオルが干されていた

壁に貼られた案内にてタオルの持参を呼びかけているにも関わらず、干されていた。

使っていいのだろうか?

もしかしたら足拭き用のタオルではなく雑巾なのかもしれないので、自分としてもタオルの持参をおすすめしたい。

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それではさっそく浸してみた

この日のこの時間、自分以外に誰もいなかったので好きなタイミングで浸して、浸しながら写真を撮っていた。

お湯はどちらかと言えば温めだろうか。

熱いと思うことはまずなかった。

案内によれば、その泉質はナトリウム-塩化物、硫酸温泉(低張性弱アルカリ性高温泉)だそうだ。

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足湯からの景色

夕日のお陰でひぐらしの鳴き声が聞こえてきそうな雰囲気で撮れた。

足だけ浸して、な~んにも考えずにぼぅ~としていたくなる。

いや、実際に途中から写真を撮るのもやめてぼぅ~としてしまっていた。

このあたり、どこか喧騒とは無縁のように静かで、西日を眺めているとこちらの気持ちまで静かになって、一日の雑念がリセットされるようであった。

なんだろうか、これも侘び寂びの魔力というものなのだろうか。

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ちなみに施設内には女性専用の更衣室がある

女性専用だ。

思春期真っ盛りの男子だったら、リセットしたはずの雑念が再びむくむくと膨らんでいきそうな「女性専用」だ。

こんなまとめ方しか出来ない自分も、きっと雑念だらけだ。

 

近くに寺がある

そんな自分の雑念を改めて捨てさせてくれるかのように、足湯の傍に寺があった。

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施設のすぐ隣にこの階段がある

その先に大きな黒い瓦屋根が見える。

最初、神社だろうかと思って狛犬見たさに登っていったら、神社ではなく寺だった。

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登った先にお地蔵さんがいた

とりあえず合掌だ。

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こちらが本堂だろうか

賽銭箱もあるのでここでも神社のように見えたが、寺だ。

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集福寺(しゅうふくじ)だ

真言宗高野派のお寺だ。

別の場所にあった山門の柱には「辰口温泉薬師・高野山真言宗興隆山・集福寺」との看板が掲げられていた。

北陸三十三ヵ所観音霊場巡りの十三番目にあたる。

また、片山津温泉の「愛染寺」(あいぜんじ)、山中温泉の「医王寺」(いおうじ)、粟津温泉の「那谷寺」(なたでら)と「大王寺」(だいおうじ)、山代温泉の「温泉寺」(おんせんじ)と一緒に「南加賀温泉の寺めぐり」の1スポットとして数えられていたところだ。

その名前から、福を集めるお寺として親しまれ、地元の人達からは「お薬師さん」とも呼ばれている。

ただ、神仏習合のなごりのあるお寺なのだろうか、境内には赤い鳥居も見られた。

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鳥居の先には赤いお堂

近づいてみるとお稲荷さんだった。

なんでも稲荷神って仏教における荼枳尼天(だきにてん)と同一視され、仏教寺院でも祀られることがあるのだとか。

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狐の姿が見えづらいがお稲荷さん

しめ縄に稲がくくられている。

お堂の中にカゴメの野菜ジュースがお供えされていた。

台座には「明治拾四年」さらには「昭和四拾参年」と彫られていた。年の後に続く文字を読めなかったので、それが何をされた年なのかちょっとわからなかった。

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本堂の屋根の下にはこんなものも

これもいわゆる「扁額」(へんがく)の一つなのだろうか。

寺や神社、鳥居などでよく見かける神社の名前が書かれた額を扁額というが、この額には字ではなく狛犬(隣には虎)が描かれていた。

しかも加賀らしく逆さ狛犬だ。

寺なのに狛犬がいた神仏習合の那谷寺(小松市)を思い出す。

なごりではなく、この集福寺も神仏習合をいまに残しているのではないかと思えてきた。

この日本って神仏習合が普通だった。明治時代になって神仏分離令が出されたので、こうして神仏習合が残っているところは珍しい。

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集福寺の左脇の小坂を進むとさらにこんなところも

狛犬の扁額を見上げながら寺の左手にある坂道を登っていくとこの集福寺「延寿殿」が見えてくる。

夕方18時ごろであったので、入り口は閉じられていて中には入れなかったが、左側には「延命地蔵菩薩」という大きく丸ぼったい石造りのお地蔵さんが、右側には白寿観世音菩薩という黒地のスマートな仏像が安置されているのがガラス格子越しに見れた。

この石造りのお地蔵さんの方は、江戸相撲大関となった鬼雷崎岩右衛門と言う力士が北陸巡業での勝利と念願成就を記念して寄進したものだとか。高さが4.8メートルもあるお地蔵さんなので、普段見慣れたお地蔵さんとの大きさのギャップから圧倒された。

延寿殿の隣には辰口温泉総湯「里山の湯」もあるので、このあたりは延寿や長寿を願う場所なのだろう。

なお、白寿観世音菩薩の方は「ぼけ封じ観音」とも呼ばれているようだ。容姿もスマートだけど、知識や知性という点でもスマートなようだ。体だけではなく脳も長生き(長活き)できるよう願える訳だ。

自分としては、記事上で無駄なボケをする必要はないと諭されたようで、上記の雑念も払われた気がした。

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と言いつつ帰りのこの坂にてチャリンコで降りたくなってしまった自分

案内に「きけん」と書いてあるほどそういう感情が湧いてくる。

もちろん、良識ある大人なのでそんなマネは実際にはしない。

しないが、中学生の時だったらやっていただろうなと、そう考えてあの頃の頭の悪い思い出を次々と記憶のタンスから引っ張り出してしまっていたのだった。

結局自分は雑念を払い捨て切ることはできないのだと、改めて思い知った今回の足湯の旅であった。