9月3日より始まった「奥能登国際芸術祭2017」へ、9月9日に再び行ってきた話のその2だ。
今回は蛸島エリアのアート作品を中心に紹介したいと思う。
蛸島エリア
蛸島エリアに作品は計3つあった。
そのうち2つは正院エリアの15番のすぐ近くにあり、駐車場も共通だった。
14番 トビアス・レーベルガー「Something Else is Possible」
14番だ
こちらは屋外にある展示物で15番を見に行こうとした時にその姿をチラっと見ることが出来た。
「Something Else is Possible」は日本語訳にすると「何か他にできる」となるようだ。
こちらがその屋外展示物
虹のようなグラデーションになっている、フレームで出来たオブジェだ。
横から見た様子
高校生の時の美術の授業でグラデーションを習った時にこんな絵を描いた思い出がある。
こちら通路のようになっていて色で言うと赤色のあたりまで歩いていける。
中には双眼鏡がある
受付の方が言うにはこれを覗くことで「未来が見える」とのこと。
覗いてみると遠くに電飾の看板が見えた。そこに書かれてあった文字が「Something Else is Possible」であった。
双眼鏡が向いている方向に見えるもの
2005年に穴水と蛸島までの全線が廃止になっている。その終着駅だったところだ。
どうやら歩いていける
ちゃんと順路になっていて切れた線路から歩いて駅の方まで行ける。
その線路の端では双眼鏡で見えた電飾の看板が立っていると受付の方に教えてもらえた。
もう使われなくなった線路
廃線の線路ながら、線路を歩くって映画『スタンド・バイ・ミー』みたいで自分としては好みだ。
まあ、現役の線路を歩くと怒られるどころか書類送検されることもあるので、廃線だからこそできることなのかもしれないが。
見えてきた電飾の看板
本当に線路の最後にあった
のと鉄道の廃線となった穴水から蛸島までは「能登線」と呼ばれていた。
能登線の終着駅のその最後の車止めの少し先に電飾看板はあった。
Something Else is Possible
もう使われず廃れた駅と線路の先に見えた未来が「何か他にできる」だ。
しかしまあ、派手な看板だ。このセンスは日本にはないものだ。
珠洲市と言う最果ての田舎の、しかも廃線となった駅にこれがあると、確かにものすごく目立つ。
目立ちすぎて、この田舎ではラブホの看板にも見えてくる(むかし都会の人に石川県はラブホが多いと言われたことがあるが、田舎で遊べる場所が少ないのだから仕方がない)けれど、ドイツ人である作者のトビアス・レーベルガー氏も悪気があってこれを設置していないだろうと、氏に代わって一応弁解しておこうと思う。
仮にラブホをイメージしたということであれば「何か他にできる=子作り」となるだろう。
それはそれで…ロックだな。
しかも子供が増えれば人口も増えてまた町に活気が戻るかもしれない…なるほど「未来が見える」も間違っていないかも。
ちなみに駅からグラデーションを見てもキレイ
このグラデーションも次第とエロく見えてきたのは自分だけだろうか?
13番 エコ・ヌグロホ「Bookmark of dried flowers」
流れからすぐ13番に到着
14番の順路に従って到着した旧蛸島駅に13番のアートがある。
というか、旧駅を使ったインスタレーションだった。
受付も駅舎の中だ
プラットホームのベンチにもこのような絵が描かれていた
メッセージも書かれてある
THE FUTURE ALWAYS BEGINS WITH OUR MEMORIES
訳すると「未来はいつも私たちの思い出とともに始まる」といったところだろうか。
ここでも「未来」を啓蒙してくれている。
受付にあった駅舎の時計
5時19分を指していた。まだ昼前だったので間違った時刻だ。
こちら、旧駅舎が使用されなくなってそのまま止まってしまった時計だ。
駅としての時間は止まっているが、観光客やボランティア等、人が行き来しているこの建物は現在、何か別のもの(現状はアート作品)として動いていることは確かだ。
受付に貼られていた当インスタレーションのマップ
※斜めになっているのは斜めに貼られていたからです。
この作品は三つの部屋から構成されていた。
最初の壁画の部屋では、プラットホームに描かれていた絵と同じタッチの絵が壁に展開されていた。
このように
小窓から覗き込んでいるようなこの目が特徴的ですな
この壁画が未来を指しているのか過去を指しているのかは不明だが、その壁画に囲まれてこんな「過去」が置かれていた。
切符販売機だ
フレッシュカードという響きがなんか懐かしい。
金沢までの券もあった
3070円だったようだ。今の自分の車(トヨタのアクア)で金沢から珠洲市を往復してガソリン代が2000円くらいだったので、それと比べると高く感じるかもしれないが、鉄道会社の価格設定って法律で縛られていたようなので妥当なところなのだろう。
映像の部屋へ
次の映像の部屋では二つのスクリーンで海外(アジア)の鉄道にまつわるビデオが流されていた。
作者のエコ・ヌグロホ氏がインドネシアの人なので、そのあたりの様子だと思われるが、なにせ英語でもない現地の言葉で、字幕が英語だったので何の話をしているのかわからなかった。
最後の花の部屋
最後は花が飾られていた。狭いブースにこのように飾られていた。
再び受付に戻ってなんの花なのか聞いてみると「バラとユリ」と教えてもらえた。
ピンクのユリの花言葉は「富と繁栄」らしい。
なお、その際に受付の方から、この花の部屋のどこかに「目」が隠されているとも教えてもらえた。
ガイドブックに載っている「目」の写真
受付の方がこれを指し示して教えてくれた。そんなのがあるなんて教えてもらわなければまずわからない。花の種類を聞きに戻って良かった。
ということで花の部屋に再び足を運び、探して探して…
見つけた
あると教えてもらった後でも見つけるのに時間がかかったのだ、知らなければまず見つけられるものじゃない。
蛸島駅の正面にもデザイン
花の部屋を出て出口からこの駅の正面に戻ってくると、地元の人たちがいた。
テントの下で芸術祭に関わるものや地産のものを販売していて、町内会の集まりのような小さな活気があった。
おまけにこの自販機も「発売中」だと書かれてあるし
どう見ても古すぎて壊れて動かなくなってしまった自販機にしか見えないのだが。
販売中だ
新札は使えないとかちゃんと説明書きもあった。
売られているのは能登線の記念品だろうか?
勇気のある方はお金を入れてみるのもアリかと思う。自分は渋ってしまった。
12番 バスラマ・コレクティブ「みんなの遊び場」
12番は同じ蛸島でも少し離れたところにある。ガイドマップと道路に掲げてあった案内を頼りに車を走らせると、そのうちこんなところに到着することになった。
「鉢ヶ崎わくわく夢らんど」だ
自分、以前からこの施設の存在は知っていて、一度行ってみたいと思っていたところであったので、この看板を見ただけで軽くテンションが上ってしまった。
こちら、すごく創造的なアスレチックがあるということで珠洲市では有名なところだ。
縦に長い施設
この屋根のある建物がアスレチックになっている。
写真で言うと左手にはサッカーもできそうな広い芝生広場もあり、駐車場も広い。
その施設の前に…
12番の案内があった
作者であるスペイン人のバスラマ・コレクティブ氏は地元の廃棄物を使って子供からお年寄りまで集える場所をずっと作り続けてきたアーティストだそうだ。
今回はもともとあるアスレチック施設に珠洲市の人達の協力の下、新たに廃棄物を利用した遊具を足したようなのだ。
タイトルの英語原題を見ても0歳から99歳のオールドキッズの広場とある。
ただし、オレンジのブイにはぶら下がらいでくれとある。
そのオレンジのブイが見える
それも…
ブイ多めだ
鉢ヶ崎も「崎」とあるようにすぐそこは海だ。地元に多くあるブイを使って誰でも遊べる、集まれる施設としたわけだ。子供はリユースやリデュースやリサイクルといったことも学べるし、お年寄りは使っていたブイからむかしを思い出すこともできそうだ。
ただ…
このアスレチックそのものは…
お年寄りには…
厳しいかも…
まるで迷路だった。まともに登れる階段もない。
登って、くぐっての連続だ。
おまけに通路も狭い
体も折り曲げないと行けないところも多く、大人でも体のサイズから、また体力的にも厳しくなってくるだろう。
自分もなんとか登って撮影しているけど、カメラ鞄とカメラを抱えながらでは、まあ厳しかった。無理だな、やめておこうと思ったポイントもいくつもある。
わんぱくな子供だからこそ楽しめるアスレチックだと思う。
誰でも集まれる施設であって、お年寄りでも遊べる施設ではないということを自分としては記しておきたい。
写真の渡り廊下のようなところへ行くだけでもくぐったり登ったりの連続
それでも、いいところであることは間違いない。
<予定外>この日、蛸島エリアで作品番号38番がいた
38番 Noto Aburi Project「炙り Bar」
作品番号38番は少し特殊で、毎回そこに行けばあるという類の作品ではない。
移動屋台のようなもので、日にちによっている場所が異なる。
しかも、毎日営業しているわけではなく、公開時間(OPEN時間)も限られている。
その38番がこの日(9月9日)、蛸島町にある「株式会社 鍵主工業」さんの会社前で15時から16時の1時間だけオープンしていた。
その時間にその場所でオープンするということを今回の道中で知った自分は、急遽予定を変更し、珠洲市を縦断して立ち寄ってみることにしたのだった。
こちらが38番だ
この黄色の案内があるので、もちろん鑑賞パスポートにスタンプも押してもらえる。
その案内にはOPENしている日時と場所も記されていた。
これらの日時にその場所へ行かなければスタンプを押してもらうことも出来ないので、スタンプをコンプリートしたい人にとっては、知った上で旅の計画を立てないといけない、難易度の高い展示なのだ。
この日の場所はこちら
「七輪の里」と言う名の珪藻土資料館だ。鍵主工業さんの前にある、鍵主工業さんによる資料館だ。
そもそも鍵主工業さんは珪藻土による七輪やコンロを作っている会社だ。このあたりでは名の知れた会社だ。
その前で屋台が展開されていた
その名も「炙り Bar」
作家名の「Noto Aburi Project」と言うのは「丸の内朝大学2013年夏学期地域プロデューサークラス能登編」から誕生したプロジェクトチームだそうだ。
その人たちが言うには、この「炙り Bar」と言う名の移動式屋台こそが38番の作品なんだとか。これを見学するだけでも良いし、なんだったら食材を買って自分で炙って食べてもOK。
炙れる食べ物が売られてます
お品書きはこちら
地元の食材ばかりだ。他にもサイダーなどドリンク系も売られていた。
食べずに帰るのはもったいないので、自分も一つ購入することにした。
間食になるものが欲しく、「たいこまんじゅう」と悩んだ末に…
いか煎餅にした
そして炙る
すぐに焦げ目がついてきた。よく見ていなかったら表面を全部焦がしていた可能性がある。
ちなみにここ、買ったものだけではなく、持ち込みもOKなのだとか。
それにしてもきれいな七輪だった。あれ?何かで見たことあるなと思いだしたら新聞で目にしていた七輪だった。
こちらがその七輪の側面
九谷焼だ。少し前の新聞に鍵主工業さんが九谷焼とコラボしたというニュースが載っていたのだ。「欲しいけど、高いんだよな」ということで記憶していた。
高級七輪シリーズの「九谷七輪」というものだ。七輪と九谷焼の間を空気が移動する作りになっていて、温度の上昇が抑えられてテーブルなどを傷つけにくいのだとか。
自分は何を勘違いしていたのか7万円だと思っていたが、本当の値段は一つ4万5000円からだった。
お目にかかれて、しかもそれで炙りを体験できるとは、この日の自分は運が良かった。
なお、バーで使用する珪藻土コンロの作り手は鍵主工業さんだけではない。同じ珠洲市の丸和工業三、能登ダイヤ工業さん、能登燃焼器工業さんの3社もある。
炭は、県内唯一の専業製炭工場「大野製炭工場」のものを使っているそうだ。
炙り終えたいか煎餅
程よく焦げ目がつき、程よく曲がってくれた。
話をしてくれたプロジェクトの方がこんな皿まで用意してくれて箸までくれた。
食べてみると、なんだろう、この場の雰囲気の良さもあってか、たかが煎餅なのにすんごく美味く感じた。
別の人はエビを焼いていた
こっちも美味そうだ。
屋台、いいですな。
プロジェクトの方が言うには、9月23日の禄剛埼(灯台があるところ、ついでに日本列島の中心もある)でのオープンが一番オススメなのだとか。時間が18時から19時なので、ちょうど夕日を眺めながら屋台で炙りができるのだ。
むっちゃ行きたいけど、自分は予定上厳しい…
感想
以上、今回蛸島エリアで体験した作品の紹介だ。
14番から12番は午前のうちにまわり、最後の38番は15時過ぎにやって来ている。
15時をまわったときには珠洲市の北の方にいたので市を縦断して南側の蛸島に戻ってきた恰好だった。
かなり回りくどいことをしているが、その分貴重な体験をできたと思う。
13番の蛸島駅で「目」を見つけた時もそうだが、回りくどいこととか、余計なこととか、寄り道だとかした方が結果的にいい思い出になるものだと、この蛸島エリアでさらにそう思えた。
最近の自分の中で「思い出」といったら、これ
こう振り返っていると、このガチャに入れたいと思うものも増えてくる。
次回は三崎エリアを中心に紹介したいと思う。