9月3日の初日に行ったらまた再び行きたくなって一週間後にも足を運んでしまった珠洲市で開催中の奥能登国際芸術祭2017。そこで目にした作品の紹介を、今回は日置エリアの折戸地区を中心に行いたい。
日置エリアの折戸地区へ向かう
見附島のある珠洲市の南方から始めた奥能登国際芸術祭の作品めぐりは反時計回りにぐるっと回って、東の海岸沿いを経由した後いよいよ北の方に差し掛かった。
日置エリアはその珠洲市北方の東側半分あたりだと思っていただければ良い。
折戸地区はその中でも県道28号線と52号線の境目あたりにある。
作品番号で言うと8番と7番だ。
折戸地区だけでは2つしかないが、同じ日置エリアの洲崎の方で広域展示している37番の一つが置かれていたのでその紹介と、そこへ向かう道中にした寄り道も併せて記したい。
狼煙で寄り道
日置エリアには狼煙町も含まれる。珠洲市、いや能登半島全体から見ても北東の端の方にある町で、灯台で有名な禄剛埼があるところだ。その町にある道の駅「狼煙」にも立ち寄ってきた。
道の駅「狼煙」だ
以前、禄剛埼に足を運んだときにも立ち寄った道の駅だ。
近年この辺りでは大浜大豆という幻の大豆を復活させており、その大豆を使った豆腐やおからのドーナツが売られている。実際に食べてみると美味しかった。
そのときには食べれなかった「豆乳ソフトクリーム」を食べたくて立ち寄ったのだった。
豆乳ソフトクリームだ
一つ300円だ。
豆乳は牛乳と違って独特のコクがある。もしかしたら大浜大豆特有のコクなのかもしれない。ただ、独特と言ってもクセがあるわけではなく、かすかに野の香りを感じるくらいで、むしろ後味はスッキリしていた。
美味でした。
道中、カカシを見つけて寄り道
狼煙から洲崎に向かう道中、田んぼを脇目に車を走らせていると案山子(カカシ)がいっぱい並んでいるところがあった。
そのカカシがまた個性的で思わず車を停めてカメラで撮ってしまっていた。
カカシがずっと並んでいるのだ
こちら、番号が振られているアート作品ではないのだが、奥能登国際芸術祭の公式HPのマップにも載っていた。
それによれば「狼煙横山のかかし」というものだそうだ。
かなり…
個性的ですけどね
以前、能美市大長野町の「かかし街道」を見に行った時も個性的なカカシを目にしたが、そこにも負けていない。
このお地蔵さまみたいなものもカカシなら…
この騎馬兵みたいなのもカカシだ
ジバニャンもいた
まとめていっぱいいる空き地みたいなところもあった
中にはものすごく「やっつけた感」のあるカカシもいた。
大人も小さな子供もみんなして作ったのだろうか、クオリティの差も見ていて面白かった。
写真の「やじろべえ」みたいなシンプルな奴、ラリアットできそうだな。
ついでに顔はめパネルもあった
なんだろうか、このやる気。
なんでも観光資源にしようとするその根性、自分は好みです。
書いてあるところを見ると、これらのカカシは手作りのようだ。(これだけ個性的なのだ、当たり前か)
作った人たちは「横山振興会」と「金沢星稜大学池上フィールド」というところだ。
学生さんたち、色々とやってくれて有り難いな。
能登洲崎で37番「珠洲海道五十三次」
狼煙横山のかかしの前も通り過ぎ、再び海岸沿いに出て洲崎地区に入ると、そこに広域展示されているアレクサンドル・コンスタンチーノフ作「珠洲海道五十三次」の一つがあった。
37番だ
「珠洲海道五十三次」は珠洲市全域に計4つあるようで、自分が見て回った中ではこれで3つめだ。
その外見だ
施されているという植物のモチーフ。この洲崎のものは、側面が道路側にあるのでこのモチーフを見つけやすい。
正面はこちら
よく見ると組まれているアルミパイプも等間隔ではない。
内側になるほど間が狭まって中央に吸い込まれるような柄のようになっている。
吸い込まれた先
ここもバス停だ。能登洲崎バス停だ。
忘れ物なのか、それとも常時置かれているのかビニール傘がある。北鉄のバスは車内に傘が置かれてあることがあり、雨の日で傘を忘れた時は自由に使って良い。借りた傘はどの時間のどの路線のバスでもいいので、また車内にて返せばいいという仕組みだ。この傘も何だかその互助精神の一片のように見えた。こういうのも田舎らしい景色だ。
田舎らしい景色
この洲崎の37番の横には稲架(はさ)もあった。
のどかな田舎の景色の中にアルミパイプのオブジェがポンッといるのだ。
というか稲架に囲まれている
そのせいか、だんだんアルミパイプによる格子の柄の調子が、稲架のそれと似ているように思えてきた。
8番 キジマ真紀「海と山のスズびらき」
日置エリアの中でも折戸地区に入った。その地区にある作品の一つ目がこの…
8番だ
展示場所は、すでに閉校となっている珠洲市立日置小学校と日置中学校があった旧校舎だった。
旧校舎だ
閉校記念碑も置かれていた
この建物、山の方にあってたどり着くまでに細くて急な坂道を登っていくことになる。
車二台が通れないくらい狭くなるところもある坂だった。
その分、旧校舎の周りは緑が多かった。
なお、旧校舎と言ってもこの建物は現在「日置ハウス」と言う名の宿泊施設になっている。日置地区の滞在交流の拠点だ。
2017年の6月1日にオープンしたそうなので最近だ。
作品は中庭に
旧校舎の玄関を入るとすぐこの中庭が見える。受付もその玄関でしてもらえた。
ただ、校舎の中で入れるのはこの中庭だけだ。すでに宿泊施設として営業しているので、宿泊客でないと旧校舎の奥の方へと入っていくことはできなかった。
作品名「海と山のスズびらき」だ
リング状に展示された、フラッグ(旗)だ。
珠洲市の方々が、海や山にまつわる思い出をもとにワークショップで一人一枚のフラッグを作ったのだそうだ。
数が多いので、気になったものだけいくつか写真で紹介したいと思う。
いきなり人魚みたいなのがいた
これは作品鑑賞パスポートの表紙にもなっているあの人魚だろうか。
着物の切れ端などを使って縫い上げて絵にしているようだ。
これ、何を獲っているんだろうか?
内側もぐるっと展示されている
リング状といっても視力検査のランドルト環(Cの形をしたマーク)と同じようにスペースがあるので内側にも入って観賞することができる。
子連れのイノシシだ
これを見てカワイイと思ったと同時にイノシシ肉を食べたくなった自分はなかなか罪深い。
よくわからないけどカワイイというのもいる
ゆるキャラ、ふわふわ界隈のことはあまり詳しくないのでよくわからないが、能登丼のゆるキャラ「のとドン」じゃないよね?…ないわね。
中にはアーティスティックなものも
海だろうか、太陽だろうか、泡だろうか…考えさせられてしまうところがアートスティックだ。
どれも夏休みの絵日記を見ているみたいで楽しい。
大人になっても夏休みに絵日記の一つや二つ書いてみるのも悪くないかもと思えてきた。
7番 さわひらき「魚話」
日置エリア折戸地区の最後は7番だ
8番は旧小中学校校舎で、こちらは旧公民館を会場にしていた。
旧日置公民館だ
作者のさわひらき氏は石川県出身のアーティストだそうで、そのお祖父さんは戦前、珠洲市で働いていたこともあるという。
作品は、むかし珠洲市と金沢の交通は陸路よりも海路が盛んだったことに注目し、海から見た珠洲市の幻影を題材にしている。
映像も使って夢現の境のような空間を演出しているので、部屋の中は基本的に暗かった。
特に自分のような三脚もまだ持っていないカメラ初心者にはカメラマン泣かせな空間であったが、黄色の案内を見ると協力は「キャノン株式会社」だった。
自分が使っているカメラもキャノンだ。まあ撮れんこともないだろうということで、気張って撮ることにした。
船があった
ISO感度を上げすぎているので船の形として見えているが、現場では暗すぎてぼんやりと船の輪郭が見えるだけだった。こんな柄というか傷があるなんて、まず確認できない。
廊下もこのように暗い
奥には映像が流れている部屋があり、右には影を楽しむ部屋があった。
また右手の窓の方には絵を回転させているのか鳥の羽ばたきをアニメーションのように見せる展示物もあった。
暗くてピントがあわず見えづらいが、その回転している絵
小さな紙の上に鳥が描かれ、回転することで羽ばたいているように見えた。
定期的にライトアップしてぼんやりとした光の中を羽ばたくので幻想的だった。
影を楽しむ部屋はこちら
蓄音機のラッパ型のホーンだろうか。
これらインスタレーションの空間がカメラマン泣かせなんて言ってみたけど、こういう撮り甲斐の被写体もあるので、実はカメラ小僧的には楽しめる空間であった。
欲を言えばもっと上手く撮りたかったけれど。
最後の部屋では海辺の映像が流れていた
二つのプロジェクターを使って正面と右手のスクリーンに映像を飛ばし、過去か現代か、夢か現かわからない世界を作っていた。
長く見ていると、珠洲市の海の見え方が変わってきそうだった。
感想
日置エリアの折戸地区の作品の紹介は以上だ。
途中、カカシの集団の紹介もしたけれど、こうして見比べてみると、あのカカシたち、愉快さで言えばアート作品に負けていないのではないだろうか。
国際芸術祭の正規の作品に触発されてその土地の人たちが「自分たちも何かしたい」と自分たちの作品を作ってしまうその波及効果はなかなか興味深い。
これなら僕も私も作れるな、と参加者が増えたらもっといろんなものが生まれそうな期待もしてしまう。
どうだろうか、なんか、無駄にカッコよく見えてきた
クリエティブの世界へようこそと言われているようだ。
次回は、作品番号で言うと少し飛んでしまうことになるが、若山エリアの上黒丸地区の作品を短くのんびり紹介したいと思う。