兼六園 ライトアップ冬の段へ
1月24日から2月4日まで兼六園では冬の段と呼ばれるライトアップが行われていた。
金沢城でのライトアップは何度か撮ったことがあるが、兼六園の夜景を撮ったことがなかったので、終了一日前の2月3日に、ちょうど夜から晴れていたこともあって仕事の帰りに寄ってきた。
ちなみにライトアップの時間帯、兼六園は入園無料であった。
無料だったから行きやすかったのもある。
ただ、無料だっただけに他のお客さんも多くて、のんびり撮るというわけにはいかなかった。
わかりづらいかもしれないが人に溢れた橋の図
一眼レフやスマホのカメラで撮影している人たちでいっぱいだ。
空くのを待ち、自分の番になるとあまり長居せずにサクサク撮って次の人に譲る必要があった。
冬の段では兼六園のすべてを回れるわけではなく、決められたルートを辿る必要がある。
それでも水面の高低差を利用した日本最古の噴水であったり、徽軫灯籠(ことじとうろう)であったり、霞ヶ池に映る雪吊りであったり、内橋亭だったりと、有名どころは撮ることができた。
個人的には夜景はあまり得意ではないので、さてどうなるかといったところであった。
カメラの練習としては撮って覚えるしかないと思うものの、夜景に関しては一つ決定的な欠陥というか、準備不足というものが自分にはあるので不安であった。
その準備不足と言うのは「三脚」だ。
昨年(2016年)の5月くらいからカメラを始めてまだ三脚を買っていないのだ。
暗いところで撮ろうとするとどうしても露出が低くなる。それを補正するためにISO感度を高めたりシャッタースピードを下げたりするわけだが、ISO感度を上げれば写真がザラつくし、シャッタースピードを下げると今度は手ブレに耐えられなくなる。
1/60秒ぐらいのシャッタースピードが手ブレに耐えられる速度だろうという話なので、それより下げようとするなら、三脚で固定する必要があるわけだ。
実際、この冬の段で兼六園を撮ってみると、どのスポットもだいたいF値(絞り)をMAXの2.8、ISO感度を3200にしても、かなり露出が低かった。シャッタースピード1/60秒では全然暗いのだ。
ということで、それ以上シャッタースピードを下げて、手ブレしないようにカチカチに腕を固めながら撮っていた。
キレイな写真が撮れるという自信などもなく、これで撮るしかなかったのだから、あとはもう根性であった。
しかも、仕事帰りなので鞄と傘も持っていてそれらを腕にかけながら撮っていたのだから、撮りながらの自分の心境は「修行」であった。
以下にスポットごとに何枚か写真を並べてみるが、写真ではなく画像でもなく「修行の記録」であったと自分の中では査定しているので、その点をあらかじめ断っておく。
日本最古の噴水
金沢城から兼六園へと入ると、順路として噴水が最初のスポットとなっていた。
いきなり斜めになった
何枚か撮ったのだが、どれもこんな調子だった。
しかも一発目からシャッタースピードに関係する動きのある被写体だ。
流れたり吹き出したりする水なんて、シャッタースピードの違いを見せる時によく被写体にされているものだ。
シャッタースピードが遅いと動きのあるものは残像のついた画になってしまう。
案の定、よくわからない画になった。
徽軫灯籠(ことじとうろう)
灯籠が、なんか怖い
灯籠がものの見事に平面に見えて、2次元キャラがそこに突っ立っているようだ。
何度撮っても、撮っている場所が同じだからか、こんな感じだった。
水面に映る奥の雪吊りと比べると生気を感じない。
まあ、石だからしょうがないんですが。
池と雪吊り
なんかキンキラキンだ…
頑張って露出補正して暗くならないように撮ってみたらこうなった。
これでF値2.8、ISO感度3200、シャッタースピードは1/5秒だ。
1/5秒はかなり遅い。
かなり頑張ったら、こんなキンキラになったのだ。
遠くの内橋亭
遠すぎた
こちらも同じようなシャッタースピードで撮っている。
しかも真ん中の照明と水面の反射による「円」の方が魔法陣みたいで自分の目にはこちらの方が目だって見える。
水面
水面だけを撮った
実物の木は省いて水面に映るその姿だけを撮っている。
写っているのは枝だが、何だかまるで「根」だ。
ISO感度3200でザラついている上に水面だということで少し歪んでみえる。
失敗のようで、ちょっと現実からズレた雰囲気が個人的には気に入っている。
唐崎松
立派な松だ
立派だからみんなして撮っているので、両端に他のお客さんの姿が何人も写っている。
ということで他の人が写らないようにも撮ってみた。
ということで縦撮りだ
人の姿は消せたが収まりが悪い。
これでシャッタースピードが1/5秒なのでだいぶ頑張った。
鞄を腕に引っ掛けながら縦撮りは正直きつい。
横撮りが平和に思えるくらい腕に負荷がかかる。
灯籠だ
こちらはまだ1/25秒のシャッタースピードだ。
それまでと比べるとまだマシかもしれないが、これでもかなり腕をホールドしていないといけない。
おかげで妖しいくらい明るい。
もう水面に映る姿だけを撮った
こう撮ればまず人は写らない。
こちらも1/5秒だ。
しかしまあ、水面側を撮ってもキンキラキンだ。
まとめ
どうだろう、この腕の筋肉を酷使したカメラがブレない努力。
当日は寒かったことも考えると、よく腕のプルプルをここまで押さえ込んだもんだ。
改めて、これは修行であったと思う。
もっとも、カメラの修行とは肉体を酷使することなのかと勘違いされてしまう人がいても困るので断っておくが、ただ三脚を買えば済む話なので、安心して欲しい。
これは単に自分の呑気と吝嗇(りんしょく)が招いた結果にすぎず、修業とやらも自業自得である。
よく記録写真ではなく記憶写真を撮れと言われるが、この修業の記録も自分の中では「早く三脚を買え」との啓示として記録されたので、ある意味記憶写真であったとも思いたい。
街中のキンキラキンを見るたびに「あ、三脚買わなきゃ」と思い出すことだろう。