石川県のお隣、富山県の砺波市には夜高祭(よたかまつり)と呼ばれる田祭りがある。
夜高行燈という美しすぎる行燈山車が町に繰り出し、見るものを魅了したと思ったら、最終的にはそれらをぶつけ合って壊しあうという喧嘩祭りだ。
絢爛さとやんちゃさが折衷したその祭りを以前より写真に収めたいと思っていたので、久しぶりに石川県を飛びだして見に行ってきた。
砺波夜高祭だ
富山県とはいえ砺波市は金沢から38kmくらいしか離れていない。
車なら早ければ40分くらいで行けるので、同じ石川県の珠洲市や輪島市といった奥能登の方へ行くよりも近い。
壊される前のきれいな行燈を撮影
現在の砺波夜高祭は毎年6月の第2金曜日と土曜日に開催される。
金曜日の夜には14基の行燈山車が静かにその絢爛さをお披露目し美しさを競い、土曜日の夜には「突き合わせ」という山車のぶつけ合い、押し合いによる壊し合いが行われる。
ということで自分が足を運んだのは土曜日の夜だ。
20時45分過ぎくらいに突き合わせが始まるので、20時ちょっと過ぎには到着して、壊し合う前の山車も撮っていた。
町の中あちこちで練り歩く山車
砺波の砺波駅北口方面、出町、本町あたりで10基以上の行燈山車が行進しているので、本通りを見ても山車、そっちの小路を覗いても行燈とあちこちで夜高行燈を見かける。
山車を引く子供たちの「ヨイ!ヤーサー!」という掛け声も町中で耳にすることができた。
近寄ってみるとこんなにド派手な山車たち
これらは一部だ。
夜高行燈は竹や木材を骨組みに使い、その上から和紙を貼って作られているそうだ。
作っている人たちはそれぞれの町の人たちで、プロの作り手がいるわけではない。
町の人たちのお手製なのだ。
それでいてこの迫力にきらびやかさに完成度だから感嘆してしまう。
作成には3、4ヶ月かかるらしい。
中には龍の口から煙が出るものも
MCのようにマイクを持って山車に乗っていた人が言うには二酸化炭素が吹き出されている。いわゆる炭酸ガスというやつだ。
子供たちも大人の手を借りて山車の上に
掛け声でもそうだが、子供たちも大人に負けないくらい活気があった。
太鼓付き小さな移動行燈
この太鼓を叩いていたのは主に子供たちだった
こうやって幼い内から登ったり曳いたり演奏したりしていれば、彼ら彼女たちが次世代の祭りの担い手になりますな。
電線の下をくぐる行燈山車
飾りが大きく高さがあるので電線の下をくぐる時は弁慶の七つ道具の刺又(Y字型のやつ)のようなもの(かなり長い)で電線を持ち上げてくぐっていた。
この祭り、大正時代くらいから続いているそうなのだけど、こういうのを見ると現代だなと思う。
ぶつけ合いはちゃんと安全を考えて行われる
電線も持ち上げて、事故なくきれいな状態で行燈山車を行進させるけど、この絢爛豪華な大型行燈をぶつけ合うのだから面白い話だ。
ただし、喧嘩祭りとは言え、現代ではちゃんと安全に配慮して壊し合う。
むかしは町同士の意地の張り合いで殺伐としていたそうだけど、そのあたりも社会秩序が発展した現代だなと思われる。
山車の動きを練習中
先端を持ち上げたり下げたりする動きを確認していた。
突き合わせの時はまっすぐぶつけ合うだけでなく、こうして先端を持ち上げて先端同士を上下に交錯させてぶつけあうこともある。
こうやって持ち上げるだけでも多くの人の手が必要なので、安全を考えるとちゃんと息をあわせてやれるようにしていなければならないようだ。
これからぶつけ合いに行く漢たち
もっといい感じで撮りたかったが、自分のカメラの腕ではこれが限界だ。
突き合わせが始まる
突き合わせは本町交差点近くにある北陸銀行前で行われていたので自分はそちらで見ることにした。
北陸銀行前では有料席も設けられていた。
それ以外の見物客ももちろん大勢やってきていて、山車と山車の周りを囲むように群がってくるので、一度群衆の中に入ってしまうとおしくらまんじゅう状態で身動きがなかなか取れなかった。
山車が通るから道を開けてくれと押されたときにはかなり圧迫された。
もう始まるというのにこの位置で身動き不能
あの混雑は、都会の満員電車のようだった。
すぐ目の前にはHAB(北陸朝日放送)のテレビカメラのクルーがいて、そんな状態でもVTR用のカメラを掲げていたからプロだなっと思った。
自分も負けじと一眼レフを構えて、時に頭の上にかざし、突き合わせのあの衝突する瞬間をなんとか写真に収めるよう努めた。
今回は普段あまり使わない連写機能を使って撮っていた。
連続写真なら衝突していく様子を写真でも伝えられると考えたからだが、あの窮屈な状態では一枚一枚撮っていられなかった。
とりあえず連続で何枚か撮っていれば、中にはまともに写っているものもあるだろうとの考えもあったわけだ。
そしてその目論見は、大方上手くいった。
突き合わせの写真をGIFに
連続撮影した理由はもう一つある。
ぶつかる瞬間を写真で伝えるために、今回撮った写真をGIFにしたいとも考えていたからだ。
GIFとは、平たく言うと、静止画を並べて動画のように表現するものだ。
連続写真を羅列して伝えるという手もあるけど、GIFのほうが一つの枠に収まってまとまりが良さそうで、山車の衝突を魅せるという点でも相性が良さそうに思えたので、今回はそれを作成してみることにした。
ちなみに自分はこれまでGIFを作ったことがない。
今回で初めて作成するGIF初心者だ。
ということでぶつかりあうところをGIFにしてみた
こうすると、静止画でも衝突の様子がより伝わったのではないだろうか。
ポジションが遠いので衝突の激しさまでは伝わりにくいものの、大きな山車が移動してぶつかっていることは少なくとも伝わったと思われる。
次に場所を移動して別角度からも撮ってみたので、そちらの動きもGIFにしてみた。
台棒の先端部分の衝突の様子だ
インパクトの瞬間だ。
なんとか場所を移動することでこの角度から撮れた。
左側の山車は先端を上げて、右側の山車の吊り飾りこと「ツリモン」の一部にぶち当たっている。
さらに寄った図
運良くすぐ近くでぶつかり合ってくれた。
吊り飾りを押し込んでいるのがわかるだろうか。
もっと決定的なツリモンがへっこむ瞬間の様子
こちらも運良く撮れた。
「ドグシャッ」とオノマトペ(擬音)を書き込みたくなるような潰れっぷりだ。
GIFの繰り返し再生機能のせいか、潰れては「ボヨンッ」と跳ね返しているようにも見えてしまうが、実際にはそんなことはない。
衝突音とともに、町の人たちが3、4ヶ月かけて作ったきらびやかな飾りが一撃で壊されているのだ。
そしてぶつかりあった2台の山車はそのまま押し合いとなる。
時にでっかい山車が、相撲で言う寄り切りのような形で観客たちの傍まで押し込まれるので迫力がすごかった。
感想
砺波夜高祭、想像以上に良かった。
あのぶつけ合い、押し合いを、やんちゃしてそうな若者たちがマイクを使ってときに煽りながら、ときに安全を考慮しながら、ときに商売人同士のご贔屓を願うような大人の挨拶も交えながら行うのだ。
押し手の数に劣るからと喋りとパフォーマンスでカバーしていた町もあり、勝敗とか関係なくぶつけあって壊し合って押し合って日頃のストレスをスカッとさせていた様子が、見ていても楽しかった。
その日は初夏だと言うのに気温が13℃くらいしかなくて寒い日だったが、突き合わせのときだけは、その寒さも忘れてしまっていた。
事故のない喧嘩祭りは、見ていて面白い。
最後に、ぎりぎりと押し合っているときの静止画
静止画一枚でも伝わるものがあるかと思う。
伝わらないのは… これまた自分の腕のなさのせいだろう。
自分はまだまだカメラ初心者だ。上手い人ならもっといい画を撮っていたはずだ。
そういう点で考えると、カメラ初心者にとってGIFはありがたい。
自分はGIF初心者でもあるので今回のデキが良いとは言わない。それでも写真で伝えるという手段の一つとしてアリだと思った。
特に、砺波夜高祭の突き合わせのように「動き」と「インパクト」のある行事はGIF向きではないだろうか。
作っていても楽しかったので、また機会があれば利用したい。