まん延防止等重点措置のために公開作品を限定しながら珠洲市で始まった「奥能登国際芸術祭2020+」へ9月5日(日)に訪れた。
そのとき鑑賞した作品の紹介、その3だ。
今回は正院エリア、蛸島エリアで目にした作品をまとめたい。
正院エリア
まん防のせいで限定公開されている作品の内、一部公開のものは避けて屋外展示作品を中心に完全鑑賞可能な作品だけを狙って観に行っていたので、正院エリアで鑑賞したのは一つだ。
作品番号で言うと46番だ。
珠洲市内4箇所で広域展開されている作品で、正院エリアではそのうちの2つが置かれている。
2017年のときにも展示されていたものだけど、改めて観に行ってきた。
46番 アレクサンドル・コンスタンチーノフ「珠洲海道五十三次」(正院)
内浦街道を走っていると正院エリアに入ったところでバス停が現れる。
バス停「正院」だ
その待合所が、このようにアートなアルミニウムのパイプに囲まれている。
2017年の奥能登国際芸術祭にて、市内4箇所のバス停で施されたこのアートが、4年経った今もずっとそのまま残されていて、今回の「2020+」でも鑑賞作品の一つとして数えられている。
46番だ
ロシアのアレクサンドル・コンスタンチーノフ氏による「珠洲海道五十三次」だ。
2017年の作品だ。
自分としてもこうして立ち寄って写真を撮るのは4年ぶりである。
ここはバス停の裏の駐車場が芸術祭用に使用可能になっているので車でも行きやすい。
正面より
現役のバス停だ。
その停留所がアート作品というのも羨ましい話だ。
2017年のとき、第一日目の最後に立ち寄った作品がここだったので、それこそセーブポイントのように思えたのが印象的だった。
(2017年のときの記事は→こちら)
4年前もこの正面のアングルから撮ってしまっているんだから、自分は成長していない。
後ろからも撮りましたけど
個性的な模様だ。
4箇所のバス停でそれぞれ模様が異なっているので、その違いを楽しむこともできる。
寄ってみる
水垢のような白い物がついている。
4年間、風雨や豪雪に耐えた証だろう。
自分はこういう経年変化が好きなので、数年後にはもっと味わいが出ているんじゃないかと期待してしまう。
46番 アレクサンドル・コンスタンチーノフ「珠洲海道五十三次」(珠洲川尻)
正院エリアにはアレクサンドル・コンスタンチーノフ氏の「珠洲海道五十三次」が施された現役のバス停がもう一つある。
それがバス停「珠洲川尻」だ。
こちらも内浦街道を走り、進んだ先の県道12号線を続けて走っていると現れる。
このように
ただ、駐車場が側にないので、車で来た際は案内板に従って海側の方へと一旦逸れる必要がある。
蛸島漁港のほうへ入っていく
こんな通りにでる
進んでいくと緑の案内板があるので、そこが駐車場だとすぐわかる。
ここが46番(珠洲川尻)の駐車場
うじま公園というところらしく、4、5台は停めれるスペースはあった。
ただ、ちょっと歩く必要がある
親切なことに、このように作品への行き方も記してある。
それなりに歩くことになるけど…
散歩だと思えば気持ちも良い
内浦なので波が穏やかな海も横目に歩ける。
2017年のときにも経験があるが、珠洲市全域を使っての芸術祭なので車での移動も多ければ、駐車場の都合上、歩かされる場面もしばしばある。
運転中だけではわからない市内の様子を目にできるので、自分は歩くの嫌いじゃない。
公園出口の車止め
マグロだろうか。これもアートに見える。
歩いていると、こういうのにも遭遇する。だから面白い。
自分としては、歩いている道中にキッチンカーとか停まっていたり、パン屋や駄菓子屋があったりしたら間違いなく立ち寄っているだろう。
バス停近くで鳥居も見えてくる
2017年のときに立ち寄った稲荷神社だ。
狛犬が古くて可愛かった。
(2017年のときに神社に立ち寄った記事は→こちら)
今回も立ち寄って参拝してきましたけどね
子連れの狛犬たちが
かわいいだよね
4年前と同じことをやっていて成長がないかもしれないけど、祭りのとき神輿やキリコが神社に立ち寄ったり神事を執り行ったりするのと同じで、自分にとっては奥能登国際芸術祭の儀式みたいなものだと捉えている。
そしてこちらがバス停「珠洲川尻」
見事にアルミパイプで覆われている。
この46番の作品は4箇所すべてでパスポート用のスタンプが置かれているので、どこで押してもいい。
後ろの古民家、まだある
古すぎていまにも壊れそうな印象だけど、4年前から変わらずそこにある。
この家(小屋かもしれない)とくっついているバス停なのでこの家が倒れるようなことになったらアートも危ないかも、なんてことを想像してしまった。
意外とアートのアルミパイプが補強になっていたりして
珠洲川尻のパイプはこんな模様。
後ろの家(小屋)の方にも渡っているし、支えているようにも見えてしまう。
実用的なアートだったりするのかもしれない。
蛸島エリア
正院エリアをさらに東に行くとある蛸島エリアでは本来5つくらい作品があるんだけど、まん防中に完全に見られるものは2つだけであった。
作品番号で言うと15番と18番だ。
正院エリアから向かうと18番のほうが近いのでそこから立ち寄ってきた。
蛸島漁港の近くに駐車場がある
17番、18番、19番を見る際はここに止めると良い。
この3つの作品はすぐ近くに密集しているのだ。
このように屋内の作品は公開を休止している
18番に向かう途中に19番や17番の作品があるんだけど、どちらもこのように休止中の案内が貼られていた。
早く観たい。
18番 トビアス・レーベルガー「Something Else is Possible/なにか他にできる」
旧蛸島駅周辺にある18番も2017年に展示された作品だ。そのまま残されて、今回2020+でも公開作品に数えられていた。
こういう2017年の作品で再展示というものは合わせて6つぐらいあるようだ。
カラフルなやつが見えてきた
当たり前だけど2017年のときと同じ場所にある。
そんなもので迷子常習犯の自分でも迷わず来れた。
グラデーションのかかった鉄柵みたいなものがそれだ。
手前にリアルのイノシシ(クマ用かもしれない)捕獲カゴが置かれていたのがシュールだ。
あの虹色のアートも捕獲罠に見えてくるじゃないか。
なにはともあれ18番だ
ドイツのトビアス・レーベルガー氏による「Something Else is Possible/なにか他にできる」だ。
こんな形の捕獲罠だ
いえ、アート作品だ。
この日、天気が曇っていて、いい感じで写真が撮れなかった。
2017年のときは天気も良くて撮りやすかったのを覚えている。
(2017年の時の「Something Else is Possible」の記事は→こちら)
4年前のものと写真を比べると、自分のカメラの腕が劣化しているように思えてしかたない。
あ、電車発見
作品の後方に使われていない車両が置かれていた。
旧能登線の廃駅巡りをしているだけに、こういうのを目にすると反応してしまうようになった。
寄り道することだけは成長している気がする。
作品に戻ろう
歩いていってカゴのよう見える四角の連続の中を通過することができる。
くぐった先には双眼鏡
4年前にも来ているので、これを覗き込むと何が見えるのかはもうわかっているのだけど、当然今回も覗き込んだ。
そうして4年前には出来なかった双眼鏡をとおして見える景色を撮影することに挑戦してみた。
2020+では撮れた!
と、自負する。
一部しか写っていないのではっきり言って初めての人には何が見えるのかわからないだろう。
こういうのが見えるのです
遠くにある電飾看板がどアップで見えるのだ。
こんな遠くからの画だと分かりづらいという声が聞こえてきそうなので、もちろん今年も…
残っている線路の上を
歩いて近づいてきた
この旧蛸島駅を含む旧能登線は廃線になっているので、残された線路の上をこうして歩いていける。
映画『スタンド・バイ・ミー』のマネごとができて自分はすごく好きだ。
ただ、現役の線路だと法律違反になって捕まってしまうので注意していただきたい。
旧蛸島駅の前を通過して線路の終点に見える電飾看板
これを見上げるのも久しぶりだ。
2017年のときの黄色の案内板も残っていた
なつかしい。
ちなみにこれ、夜になるとちゃんと光るそうで、夜間に見に来るとまた別の印象があるみたいだ。
夜間鑑賞時間は18時から21時だ。
前回2017年のときにも書いたけど、この旧蛸島駅の方から先程のグラデーションを眺めると結構きれいに見えたりするので、今回も振り返って撮ってみたら…
線路沿いの畑に何かいた
ホラーだ
おそらく案山子だろう。
最近の案山子は創作意欲に溢れたものが多く、マネキンを利用したりすることもよく見られるが、マネキンの頭だけ使うのはロックすぎる。
どう見ても「さらし首」だ。
怖すぎて、そりゃ害鳥だって逃げるだろうけど、作品を夜間鑑賞しに来た際に目にしたらマジでビビってしまいそうだ。
夜間鑑賞の際はご注意いただきたい。
気を取り直して旧蛸島駅から
そして線路の上から
グラデーションが一番キレイに見えるのは線路の上からだと思われるが、それにしてもあのグラデーションに吸い込まれそうだ…
この作品、やっぱり捕獲罠に思えてならない。
15番 リュウ・ジャンファ(刘建华)「漂移する風景」
同じ蛸島エリアながら18番からは少し離れたところにある15番も見に行ってきた。
場所は珠洲ビーチホテルのあるあたり
このホテルを正面にして左手に珠洲焼資料館というものがある。
この建物が珠洲焼資料館
目的の15番の作品はこの建物の周りに置かれているということなのだけど、ここから見た限りではどこに展示されているのか正直わからなかった。
近づいてみると見えた緑色の案内板
敷地内の庭、というか軒下に当たる場所に展示されているようなのだ。
展示場所の図もあった
このように、正面玄関から見て左右の軒下両方に展示されているのがわかる。
ということで15番だ
中国のリュウ・ジャンファ氏による「漂移する風景」という作品だ。
2017年の芸術祭を観に行った方なら、この作者名、この作品名を目にした覚えがあるかと思われる。
実はこちらも4年前の第1回目のときに制作、展示された作品なのだ。
ただ、2017年のときは見附島近くで展示されていたので、作品の風景はぜんぜん異なる。
(2017年のときの見附島付近の展示の記事は→こちら)
前回の芸術祭が終わったあと、見附島付近からこの珠洲焼資料館の敷地内に作品が移設され恒久展示されることとなったようなのだ。
その作品がこちら
割れた珠洲焼や中国の景徳鎮の陶器が散りばめられている。
まるでゴミのようだけど、アートだ。
当たり前だが、見附島のある海岸で並んでいたときと景色がぜんぜん違う。
捨てるのも困るから展示してしまえ、との声も聞こえてきそうだけど、大陸との交流や文化のあり方を啓発する作品だ。
じっくり見てみると変な陶器が多い
人形だったり、パソコンのキーボードだったり、戦車だったり、大陸の陶器は日本にはあまり見かけないものが多い。
なんのポリタンクだ、これは?
こういうのも陶器で作ってあったりするから、さすが陶器の本場、中国と感心してしまう。
パソコンのモニターみたいなものもあるし
クマのぬいぐるみみたいなものも
ぬいぐるみみたいなものを陶器で作ってあったりするから、頭がこんがらがってくる。
なぜ白菜?
こんな陶器を作ってどこに置かれ、何に使うのか日本人の自分にはよくわからない。
わからないだけに興味深い。
反対側も見てみる
同じように散りばめられていた。
ラジカセの形をした陶器や帽子の形をしたものまである
他にも靴や長靴、本の形をした陶器もあった。
しかも一つではなく同じものがたくさんあったので、どれも量産されているものなのだろう。
大量生産されて使われなくなる、捨てられる…
まるで陶器の墓場のようでもある。
不思議すぎて、眺めながらミステリーハンターになった気分になった。
2017年のとき、こんなにしっかり見ていなかったので改めてこうした発見があって驚いている。
普通の焼き物を目にするとなんだか落ち着く
ギャップがすごい。
あとで珠洲焼館にも立ち寄って売られている珠洲焼も見てきたけど、珠洲焼、買いたくなったよ。
近くに、というか資料館の正面に珠洲焼館もあるのだ
値段もそれなりにするのでまだ買っていないが、次回以降もし買った際は大事に長く使いたいものである。
そういう物に対する有難みを気づかせるための作品だったのかもしれない。
感想
以上、第一日目に正院エリアと蛸島エリアで公開されていた作品の紹介である。
今回挙げた作品すべてが2017年度のときにも展示されていたもので、第1回を見に行った人にとっては真新しいものはなかったかもしれないが、今もなお残されている点には感慨深いものがあった。
再び4年後に見てみると、以前には気づかなかった新しい発見もあるもので、作品への解釈というものは見るたびに、月日によって変わっていくものだと再確認したものである。
また、作品は前回に見たものでも、そこにたどり着くまでに町中で目にしたものが新鮮に映ったりもした。
蛸島エリア駐車場からみた漁港
ファインダー越しに撮りたくなる景色がいくつもあって、自分はまだまだ珠洲のことを一部しか知らないのだなとの謙虚な気持ちにもなった。
9月16日(木)に芸術祭開催期間中だというのに同市で震度5弱の地震があったけど、そんな珠洲市の町に被害がないことを祈る。
次回は、第一日目最後として若山エリア、そこから飛んで大谷エリアで目にした鑑賞可能作品についてまとめたい。