初日に足を運んで目にしてきたアート作品の紹介その2を記したいと思う。
前回の宝立(ほうりゅう)エリアに続き、今回は上戸(うえど)エリアと飯田エリアにある「ラポルトすず」にて体験したことを中心にまとめたい。
上戸エリアへ
上戸エリアにあるアート作品は計2つだった。
そのうち一つは、本来夜に見るべきもので、昼間に見てもあまり意味が無いという旨を受付の方に教えてもらった。
そのため、今回上戸エリアで詳しく紹介する作品は実質一つである。
30番 ラックス・メディア・コレクティブ「うつしみ」
見附島にある33番からまわって番号で言うと逆走している状態で30番に向かった。
この30番の作品こそが昼間見てもあまり意味がないと言われたものだ。
そのため、黄色の案内を撮ることも忘れていた。
その作品の昼間の姿は一応写真に収めているので紹介したい。
こちらが「うつしみ」昼間の姿
場所は旧上戸駅だ。
前回も記したように、のと鉄道の穴水から蛸島までの全線が2005年に廃止されてしまったので、この駅も現在使われていない。
その使われていない駅舎が、今回アート作品に使われたのだ。
駅舎の上に乗っかている捕獲ゲージ(自分にはそう見えた)のようなものがそれだ。これが、日が沈むとぼんやりと光るそうだ。
その姿を田んぼの中から見るというもので、たしかにこれでは日が沈んでからではないとあまり意味が無いというのもわかる。
案内にも「日没から9時まで」鑑賞可能と書かれていた。受付の方が言うにはこの展示は無料なのでいつでも来れるそうだ。
鑑賞パスポートのスタンプは9時半から17時までのいつもの時間内でしか押してもらえないので、このときはスタンプだけを押してもらって去ることにした。
改めて別の日に日が沈んでから来たいと思うので、作品に対する感想はその時にまた記したいと思う。
29番 眞壁陸二「青い舟小屋」
29番だ
こちら、海のすぐ目の前にある。車のナビだけではまず表示されないところであったが、県道249号線がすぐ海の側を走っているので道を進んでいるとわりと見つけやすかった。
こちらが「青い舟小屋」だ
その名のとおり、かつて船小屋として使われていた小屋だ。
自分が到着した時、作者ご本人がおられた
先着の鑑賞客とともに中に入り、作品の解説を本人自ら行っていたので、自分もちゃっかり耳を傾けてその説明を聞いていた。
自分は美術館に行くとよくこういう真似をする。解説を付けている団体客の後についていってその話を一緒に聞くのだ。むかし冬にスノーボードをやっていたときは、インストラクターに教わっている人のあとをシレッとついて行ったこともある。自分で雇えよって話なので、これも貧乏性だ。
中はこうなっている
中の壁は、これまたタイトルどおり青色だ。ただ、青と言ってもネイビーもあれば水色もありと、いろんなタイプの青だ。
眞壁陸二氏が言うには瞑想ができる寺院のようなものをイメージして作成したのだとか。
部屋の中央に立って入り口へと向くとそこからは海が見えてくるので、その景色を見ながら心を鎮めていく訳だ。
中から見た海
運良く一人で中へと入ることが出来た。
ほかにお客さんがいたので人の頭(真壁氏いわく「生首」)が見えてしまっている状態であるが、「青」に囲まれながら隙間から青い海を眺めることができる。
眺めていると、「青」に溶け込んでいるかのような、または「海」に溶け込んでいるかのような感覚がある。「あれ? 青と海どっちだっけ?」となったら瞑想状態に突入していたことになるのかもしれない。
自分はどちらかと言うと「海」に溶け込んでいる感覚のほうが強かった。「青」に溶け込んでいるとの感覚が強いか「海」に溶け込んでいるとの感覚が強いかで性格判断やそのときの感情判断になるのだろうかと、そんなことも考えた。そんな妄想をしている間は、やっぱり瞑想できていないのだろう。
ついでに、ここから見える海は日の出のときだと赤くなるんじゃないだろうか(この海岸は東側にある)とも頭をよぎった。公開時間が9時半なので時間的に無理であるがそれはそれでどういう様子になるのか見てみたいものだった。
日の傾きによる演出はある
このように小屋の壁などには適度な穴があって光が漏れてくる。夕方になって日が傾いてくると漏れる光の形が変化したり窓から光が差し込んできたりして、小屋の中の風景がまた少し変わってくるのだとか。
自分が足を運んだのは正午過ぎだったので、小屋の中だけを見れば夕方くらいに足を運んだ方が良かったのかもしれない。夕方はその分、青い空を見ることが出来ないかもしれないが。
室内や屋外など空間を演出するアートは時間によって印象が変わるので面白い。のんびり屋向けだろう。
なお、そういう室内や屋外など場所や空間そのものを作品としてしまうことを「インスタレーション」というそうだ。今回の芸術祭をまわって自分は初めてその名前を知った。
ちなみに海岸そのものはこんな感じ
これはこれで撮りたくなってしまう景色だった。
「ラポルトすず」へ
上戸町から飯田町へと県道249号を進み飯田港へと出ると、その港付近に「ラポルトすず」という多目的ホールが見えてくる。
9月3日の芸術祭初日にはこの「ラポルトすず」で芸術祭の開会式が行われていたようだ。
自分としても事前にそのことは知っていて、開会式開始の11時にはこのあたりに到着できていたらいいなと考えていたのだが、実際に見附島からまわってみると前回の宝立地区だけで正午くらいになってしまっており、その希望的観測は見事にただの希望で終わってしまっていたのだった。
ここが「ラポルトすず」
音楽、演劇、映画、公演などいろんな催しが行われる場所だ。2006年に開館したので比較的新しい。
開会式には間に合わなかったが、このラポルトすずの前では少し変わった催しが行われていて、またその館の中には芸術祭の作品も展示されていたので紹介したい。
自動運転自動車に乗る
奥能登国際芸術祭のアート作品ではないが、開会式が行われた「ラポルトすず」の建物前では初日、金沢大学の研究チームによる「自動運転デモ走行@奥能登国際芸術祭」というものが行われていた。
正確には芸術祭期間中の土日に行っているそうだ。(ただし、10月8日、14日は除く)
ラポルトすずの建物の周りにこのクルマがいたのだ
館内に入る前にこの車両が目に止まり、しばらく眺めて写真を撮ってしまっていた。
そうすると「乗ってみませんか?」と周りにいた関係者の方々が声をかけられた。
突然で戸惑ってしまったけど、こんな機会は滅多になかったので…
乗った(後部座席に)
ほかにもう一人、自分と同じように車体の写真を撮っていた方と一緒に乗せてもらった。
さすがに運転席には乗れないが、決められた走行ルートを走ってもらいながら自動運転の仕組みなどを簡単に説明してもらえた。
モニターを見ると周りの障害物等を感知しているのが分かる
映っている緑色のものが「人」だそうだ。
車のルーフに取り付けられたレーザレンジファインダによって全方位環境認識を行っているという。
信号のある交差点に差し掛かると車内にアナウンスが流れ、自動的に停車していた。信号の赤や青はフロントガラス付近に取り付けられたセンサーカメラで認識するようだ。
そのカメラ
「雨の日など天気に左右されますか?」といじわるな質問をしてしまったが、現段階では「そうですね」らしい。
手放しでOK
この状態でハンドルが勝手に動いて曲がっていた。足元は見えなかったが、解説によれば勝手に止まっていたようだ。
レーザセンサがしっかり働きすぎて、交差点を右折時に別の車が接近するやすぐにブレーキが効いてちょっと中途半端な位置で停車してしまったけど、そういうのはご愛嬌だ。
よく障害物を感知していたと思う。許可が降りないので無人で走行はできないが、技術的には無人走行も可能なのだそうだ。
自動運転は過疎化した地域や高齢化社会でニーズがあるらしく、こういった実証実験は2年半ぐらい前から珠洲市で始めていて、北海道の網走や金沢でも行っているそうだ。研究そのものは20年くらい前から始めているという。今から20年前というと97年だ。トヨタで言うと「アリスト」なんかが登場していた頃だ。そんな頃から始めていたなんて正直驚いた。
Googleなんかも自動運転の開発を行っていたが、こちらはそれらと関係なく金沢大学独自で行っている研究だそうで、その点もスゴイ。
デモ走行は5分ほどで終了する。
降車後、アンケートも書いた。
そこに「今度は雨の日に乗ってみたい」とまた意地悪なことを書いてしまった。
自分は自動運転には少なからず興味があるので、そういうところも知りたいし、どうせ作るならそういった点もクリアしてほしいと思っている。
石川県人としては、いっそ金沢大学がGoogleを超えてくれないかなと思ったりもするのだ。
なんにせよ、5分間でもなかなか貴重な体験ができた。研究員の人たちと思われる関係者の方々が何だか楽しそうだったところも印象的だった。
研究って、やっぱり面白そうですな。
26番 力五山「潮流 - ガチャポン交換器 -」
デモ走行を体験した後、ラポルトすずの玄関に近寄ってみると、館内でもアート作品の展示が行われているという案内があった。
26番だ
ガチャポン交換器とある。
ガチャがアート…。
想像するものと言ったら「でかい奴」であったが…
思ったとおりデカかった
天井に届きそうな高さだった。
しかもアーティスティック。「ガチャ=ボックス」という固定概念を見事に壊してくれている。
おまけにちゃんと回すことができる
1回100円だ(鑑賞パスポートを持っていても別途料金)。最近九谷焼ガチャ(1回500円)をよく回していたからか、異常に安く感じてしまった。
回せるなら回す
それが流儀ではないだろうか。何の流儀かはわからんが。
コインを入れてダイヤルを回すと、カプセルが螺旋状のチューブを下ってきた。
カプセル到着
潮流をイメージしたその螺旋チューブを通る様に見とれてしまって、シャッターを切るのも思わず忘れてしまっていた。その動きが一番ガチャの固定概念を壊していてカッコイイ。
出てきたのは「鳥男バッチ」の缶バッチ
カワイイじゃないですか。
このガチャをデザインした「力五山」というのは加藤力、渡辺五大、山崎真一の3氏によるユニットだ。
力五山本人たちもいてスピーチも行われていたようなのだが、自分が到着したのがちょうどそのスピーチが終わったときであった。残念。
この館内では奥能登国際芸術祭の公式グッズも売られており、そこで購入した公式ガイドブックによれば、「カプセルは珠洲市の住民から収集したものをはじめ、海外の漂着物やさまざまな交流にまつわるものなどが入っています」とあった。鑑賞パスポートのスタンプを押してくれた受付の人が言うにはアタリもあるようだ。
こちらの棚のものが「交流にまつわるもの」でありアタリなのだろうか?
ちなみにこの棚自体も小学校(だったかな?)から貰い受けたものらしい。下駄箱だろうか。
もっとガチャを回したくなったが、あいにく100円玉が財布の中に一枚しかなかったので今回は諦めることにした。
また後日改めてこの国際芸術祭を見に珠洲市にやって来たときに再び回しに足を運べばいいので、その時の楽しみとしたい。
感想
今回は上戸エリアと飯田町にある「ラポルトすず」の展示物+αを紹介してみたが、日没に見たほうがいいと言われたアートを始め、ガチャにしても雨の日に試乗したいと思った自動運転自動車にしても、もう一度やって来て見てみたい、参加したいものばかりで、なんだか宿題をいくつも残したような気分である。
一回鑑賞しただけじゃ味わい尽くせないという悪魔的魅力がこの奥能登国際芸術祭にはあるのかもしれない。
もし宿題が多いようなら、全部見て回るのにあと2日間どころか3日間は必要なのではないかとも思ってしまった今回のまとめであった。
それでもこれはまた回しに来たい
次回は、「ラポルトすず」以外の飯田エリアにあったアートを紹介したいと思う。