11月5日に閉幕してしまったけど、奥能登国際芸術祭2020+で目にした作品の紹介、第五日目その2だ。
今回は蓮沼昌宏さんの「きのうら、きのうら」を取り上げたい。
木ノ浦ビレッジへ
作品番号No.5の「きのうら、きのうら」は日置エリアの木ノ浦ビレッジにある。
木ノ浦ビレッジは木ノ浦海岸にある体験宿泊施設だ。
木ノ浦ビレッジだ
ここにはNo.5の他にNo.6の一部(屋内展示)もあるので、続けて見ることになるかと思う。
ちなみに左側に見える坂を降りていくとNo.6の屋外展示がある海岸へとたどり着ける。
この距離の近さなので、第四日目最後のときに記したように時間の都合でどちらかだけ見るというのは移動時間も移動費ももったいなくなってしまうのだ。
受付は入口前
こちらの受付はNo.5のスタンプを押してくれた。
この時点で自分のパスポートのスタンプがすべて埋まっていたので、コンプリートした後にどこへ持っていけばいいかをここで教えてもらっていた。
5番 蓮沼昌宏「きのうら、きのうら」
建物の中は土足で上がれない
ここで靴を脱いで上がることになる。
作品は上がった先、すぐ目の前だ。
この柵の内側
見てわかるように広くはない。
一度に大人数は入れないし、一つ一つ順に見ていくことになるのでこうして列になりやすいところだった。
5番だ
作者の蓮沼昌宏さんは画家であり記録写真家だ。
「キノーラ」によるアニメーションもよく制作している。
今回も「キノーラ」を使った作品だ。
「キノーラ」というのはハンドルでリールを回転させて観る動画鑑賞装置のことだ。
フランスの映画発明者でもあるリュミエール兄弟が1895年頃に発明したものだ。
こういうの
矢印の方(反時計回り)にハンドルを回すことでアニメーションが動き出す装置だ。
このように
細長い紙一枚一枚にパラパラ漫画のように画が描かれている。
ハンドルを回すことでパラパラさせて、アニメーションにしているのだ。
実際に回してみると速度の調整がなかなか難しい。
でもアニメーションがかわいく生きているように見えてくるから、回しているだけですごく楽しい。
キノーラがこんなにある
7つか8つくらいあっただろうか。
そのどれもで物語もアニメーションも違う。
しかもこれ、すべて手描きなんじゃなかろうか
この束をすべて…
ちゃんとアニメーションになるように一枚一枚描いていたということは、どれだけの労力と時間が掛かっていたのか… 想像するだけで胃や腰や目が痛くなりそうだ。
それでもって、これ…
写真泣かせだ
このぐるぐる回す楽しさと、アニメーションの細かさと動きを伝えるのに、写真では不向きだ。
連写してGIFにしようかとも考えたんだけど、連写しても一枚一枚撮れるわけもなく、そのうえ何枚あるんだよって話なので難しい。
人によってはスマホの動画で撮っていた。それも何人もいた。
そうするのが無難なんだろう。
それでも写真で伝えられないかとあれこれ撮る自分
往生際が悪いと言うか、撮らずにはいられなかった。
もちろん伝えられる写真は撮れなかったのだけど、ファインダー越しに観るのも、シャッターを切ってどの絵が写っているのかを後で確認するのもなかなか楽しかった。
写真には写真の楽しみ方が出来たのである。
物語の中には
ウィルスのせいで作品制作が止まった話も
そこからの再スタートを記した話だった。
アニメーションの中の文章が日本語なので、その脇に英語で訳したものも貼られてあった。
さすが国際芸術祭
「木の浦でのキノーラ」こと「きのうら、きのうら」、木ノ浦海岸や珠洲焼にまつわる物語(アニメーション)で構成されていたけど、その全体は「再スタート」がテーマなのだろう。
感想
自分は最初、反時計回りにキノーラを回っていたが、最後に回した「再スタートの物語」から始めて、時計回りに見ていくのが順路だったのかもしれない。
自分より先に見て回っていた人たちが反時計回りに巡っていたので、流れから自分もそうしてしまっていた。
流れに従ってしまう… 日本人らしい習性である。
おかげで変な混雑はなかったわけだけど、自分は空いてからもう一度、時計回りにキノーラを順に回していた。
外側で待つ自分
どっちが正解かは不明だけど、気になると一度はやらずにはいられない。それもまた自分の性分である。
「再スタート」のキノーラを何度も観るほど、一年延期したとは言え、また9月にはまん延防止等重点措置で一部の作品しか公開されなかったとは言え、よくコロナ禍に負けずこの奥能登国際芸術祭2020+を開催してくれたと思った。
珠洲市や芸術祭関係者の方々の胆力に感謝の念を抱いた。