珠洲市の「奥能登国際芸術祭2020+」で目にした作品の紹介、第四日目その6だ。
すべての作品が鑑賞可能になってから再び蛸島エリアに向かった今回は田中信行さんの「連続する生命」を取り上げたい。
展示場所は北前船の廻船問屋だった旧島崎家
田中信行さんの作品は蛸島エリアにある。
まん防が解除される前、鑑賞がまだ出来なかっときに1、2度その前を通っているので場所はよくわかっていた。
この17番の案内図を9月に2回以上目にしている
矢印に従って進んで幟旗が立っているところまで行けばもう展示場所だ。
左の大きな家と右奥に見える蔵も展示場所
展示場所は2つあった。
受付は左の大きな家(母屋)で行われていたので、まずはそちらから立ち寄ることになる。
大きな家だ
鑑賞ができなかったまん防中の9月は受付が設けられていなかったので、こうして全体を遠くから見ることもしなかったけど、こうしてみると大きな家だ。
北前船の廻船問屋(かいせんどんや)をしていたというから地元でも有力な家だったのだと思われる。
受付の下の招き猫がかわいい
金運がアップしそうで、気づけてなんか嬉しい。
郵便受け
ストレートな表現だ。
「三蔵」というのはこの家に住んでいた島崎三蔵さんのことだ。
この母屋では島崎三蔵さんやそのお父さんが集めたり使っていた品々の展示も行われていた。
こちらがそれら
島崎家の家族の歴史が知れるもので、田中信行さんの作品ではないが、一緒に展示させてもらったと家の方が言っていた。
説明してくれたその家の方というのは三蔵さんの娘さんに当たる方だ。
普段は県外に住んでいるそうで、この芸術祭の間はここ蛸島に戻ってきているのだと話してくれた。
島崎家の家族の歴史もいろいろと話してくれて、三蔵さんのお父さん(娘さんからするとおじいいちゃん)が北前船の仕事が衰退し始めると樺太に渡ったこと、お父さんである三蔵さんはその樺太に生まれ、終戦後に珠洲に戻ってきたこと、お父さんの三蔵さんは今回の芸術祭を楽しみにしていたが、開催前の7月に97歳で亡くなったことなども話してくれた。
この黒漆の御膳が美しい
婚礼なんかで使う赤いものはよく目にするけど、こういう黒いものは自分の目には珍しく映った。
なんでもお坊さんだとか位の高い人が使うものがこの黒色なんだとか。
さらに隣の部屋には絵画も
この画、すべてお父さんの三蔵さんが趣味で描かれていたものなんだとか。
上手いものだ。
キリコ祭りの絵が特に好み。
絵以外では大きな算盤(そろばん)が気になった。
17番 田中信行「連続する生命」
あらためて家の前にあった案内板
17番だ。
作者の田中信行さんは漆による新たな造形の世界を切り開いている方で、現在、金沢美術工芸大学で教授もされている。
前回の奥能登国際芸術祭2017のときにも「触生-原初-」という漆で作られた作品を出していたのをよく覚えている。
あれ、静かに置かれているだけでも訴えるものがあって、かなりインパクトあった。
活動実績の一覧もあった
縦に長い。
それだけ活躍されているということだ。
今回の作品は島崎家の母屋の奥の部屋に展示されている
土間の奥へと進み、左手に見える畳の部屋が展示場所だ。
その作品というのが…
こちら
薄暗い部屋の長押に、はっきりと浮かぶ赤い造形。
これもやはり漆(乾漆)で作られているようなのだけど、その存在感たるは、確かにそこに生命が宿っていて、こちらを見下ろしているようである。
やはり静かに掛けられているだけなのに、無言のプレッシャーのようなものを感じてならない。
漆で出来た造形物だと言うのに、存在感がありすぎだ。
少し角度を変えたり、ズームを変えたり何枚か写真を撮ってはいるが、上げるのは潔くこの一枚だけにしたい。
一発で黙らせる、または訴える力のある作品なので、自分もそれに応えたくなった。
島崎家の蔵の方へ
作品「連続する生命」は2つあり、母屋の一つと、もう一つは島崎家の蔵に置かれている。
もちろん見に行ってきた
母屋を出て、道を挟んだ向かいにある。
土壁のほころびとかを見ると年季が入っているのがわかる。
島崎家の家は普段住んでいる人がいなかったのだけど、だいぶ傷んでいたので、芸術祭にあわせ地元の方々の力を借りて外壁などを修復しているのだとか。
ここにも案内板あり
作品に近づいたり手を触れたりしてはいけないそうだ。
また、蔵の中は暗いので足元には気をつけてくださいとある。
特にここで注意
蔵の入り口が段差になっていて、足を踏み入れると一段下がることになる。
外から見ても暗くて足元がハッキリしないので特に自分のような鳥目(夜盲症)の方は注意していただきたい。
その蔵の暗がりの中で目にした「連続する生命」が…
こちら(2回め)
暗いとはいえ、作品にスポットライトが当てられていたので、写真を撮るときはオートフォーカスを働かせることが出来た。
この蔵の方も赤い漆(乾漆)で出来ていて、表面は玉のようにツルンとしている。
ライトのせいもあって、炎の内炎や外炎のような層が見え、その層によって、何かが内部で胎動していると想起させられた。
存在感と言うよりは生命のバイブレーション(鼓動)を感じるようで、見ていてあったかくなる。
こちらも何枚か写真を撮っているけど、一目で心に、脳に、細胞に入ってくるものがあったので、やはりそれに応えるように自分も一枚だけ載せることにした。
感想
田中信行さんの2017のときの作品は琥珀がかったような漆が印象的だったのに対して、今回2020+では赤漆が特徴となっている。
赤色の持つ力を、今回の作品から考えさせられた気がする。
プレッシャー(威圧)だったり、生命のバイブレーションだったりを感じ取ったわけだけど、こう書きながら「ZガンダムやZZみたいだな」とも思ってしまった自分はやはりガンダム脳なんだと思う。
クワトロさん(シャア・アズナブル)もパーソナルカラーは赤だったしね。
島崎家の近くに舟も置かれていた
だめだ、宇宙シップに見えてきた…
感じ取ったバイブレーションのせいで、妄想が暴走していく…
いかん、いかん。