能登半島の最涯て・珠洲市で行われている「奥能登国際芸術祭2017」に二回足を運び、その二回目を「第二日」と称してのんびりと綴っているその5だ。
今回は、前回の流れからはかなり飛んで、若山エリアの上黒丸地区の作品を紹介したいと思う。
流れのおさらい
前回、三崎エリアの折戸地区を中心に紹介した。珠洲市で言うと北東の端の方にある地区で、海岸沿いを車で走らせて到着するところだった。
作品番号も8番、7番と一桁台で、番号の並びを見てもわかるように流れとしては1番へと向かって作品を順に鑑賞していた。
ところが今回紹介する若山エリアの上黒丸地区は珠洲市でも中央あたりにある。作品番号で見ても34番だ。しかも、そこまでは峠道をクルマで走って到着する。山の中にあるのだ。
なぜ、こんな変な流れになったかというと、三崎エリア折戸地区の7番を見終えた時にちょうど15時になり、期間限定でしかもその日によって場所も異なるイベント作品である38番を見に行きたくなったからだ。北東の折戸地区の方から南の蛸島へと珠洲市を縦断して戻ったのだ。
作品番号38番「炙り Bar」について書かれた記事は→こちら
また「炙り Bar」を体験したあとは、飯田町にある「ラポルトすず」にも再び足を運び、そこで展示されている巨大ガチャのカプセル作りも行っていた。
巨大ガチャのカプセルづくりについて書かれた記事は→こちら
カプセル作りを終えた頃にはもう16時を過ぎていた。作品の公開時間は17時までなので、まだ観に行っていない作品の中でこのラポルトすずから向かってまだ間に合いそうな作品はどれかとインフォメーションの方に鑑賞パスポートを見せながら訊ねてみたところ、出てきた結論が若山エリアだったのだ。
インフォメーションのお姉さんも「ここからだとどこも遠いですね」と少し困ってしまうくらい、大きな寄り道をしていたのである。
なお、インフォメーションの方は、「奥能登国際芸術祭2017」の公式HPの芸術祭マップがグーグル・マップで作られているので、スマホにグーグル・マップが入っていればそのナビシステムを使って行けることも教えてくれた。
公式HPの芸術祭マップは↓こちら
いつも車のナビを使って移動しているので本当は作品が展示されている施設などの正確な住所番号を知りたかったのだけど、まあいいか。
今年になってスマホを持つようになった自分としては、自分がスマホユーザーであると自覚できたやり取りでもあったので、なかなか思い出深い。
若山エリア上黒丸地区
若山エリア全体を見ると作品は3つある。34番、35番、36番だ。(イベントである39番を入れると4つ)
それらは同じ若山エリアながら地区はバラバラで少し離れている。
ラポルトすずから向かって出来ればいくつか鑑賞したかったのだが、時間の都合で観ることが出来たのは34番のある上黒丸地区だけであった。
34番 中瀬康志「月を映す花舞台 アートキャラバンKAMIKURO」
34番だ
こちら、山の中の旧上黒丸小中学校にあった。
旧上黒丸小中学校は現在「上黒丸生涯学習センター」として利用されている。
閉校記念碑もあった
この日に閉校記念碑を目にしたのは旧日置小中学校に続いて二度目だ。
しかも、ともに小学校と中学校が一緒になっていた校舎だ。
芸術祭で盛り上がっている時にアレだが、過疎化についても考えさせられた。
そんな旧学校を利用した本作品は2種類ある。
作品タイトル名の「月を映す花舞台 アートキャラバンKAMIKURO」は実は「月を映す花舞台」と「アートキャラバンKAMIKURO」に分かれていて、それぞれで趣が異なる。
まずは「アートキャラバンKAMIKURO」を紹介したい。
こちらはテントをデザインしたものだった。
校庭にそれはあった
テントと、あとは脚立がいっぱい並んでいた。
テントだ
この日、この時間はシートが上がっていたが、下りてよりテントらしく見えるときがあるのだろうか、ちょっと気になる。ちなみに移動式のテントだそうだ。
そして脚立の群れだ
こちら、「人」に見立てているらしい。
何か布きれが巻かれてあるのが見えるだろうか。それらは鑑賞に来た人たちが巻いていったもので、鑑賞者たちによって見た目が変化してくる参加型のアートだった。
布きれは受付でもらえる
「どうかよろしかったら」といった説明を受けて渡されたが、自分としては「よろこんで」である。こういう参加型、大好物だ。さっそく巻きに行った。
どうせなら一番奥の脚立に巻いてやろう
そう考えて一番端の脚立を選んだ。すごそこが林みたいになっているので、校庭なのに山の中へと向かっているようであった。
巻いて結んだ
脚立は一応展示物であるので、昇ったりしてはいけない。自分としてももっと高いところに巻きたかったが、勝手に昇って壊してしまってもシラケてしまうので無難なところに巻いた。
とりあえず風が吹いて飛んでいったりしないよう、かなりきつめに縛っておいた。
巻き終えてその場から全体を眺める
眺めながら自分が日陰に立っていることに気づくと、端の方に巻いた自分の性格は動物に例えると「はぐれメタル」だなと、そんなことを考えた。
もう一つのプロジェクトへ
「月を映す花舞台」の方は学校の中庭にある。
その通路はますます山の中へと入っていくような印象があったが、写真でもわかるようにその手前で地産の野菜などが無人販売されていた。
竹に「料金入れてね」
ハートマーク付きだ。家族間でラインしているような無人販売所だ。
中庭に行くと瓶が並んでいた
これらは地元の人たちから提供してもらったものらしい。
この瓶(カメ)の前にタイトルにある「舞台」がある。
舞台だ
月を模しているそうだ。
この満月のような舞台、実はちゃんと表現場として使われるそうだ。
この上黒丸地区では、奥能登国際芸術祭2017が開催される以前の2011年から独自でアートプロジェクトを始めており、実は地域全体でアートが根強い。今回この舞台を作成した中瀬康志氏も内陸部や上黒丸地域一体をアート圏として相互に連動したプロジェクト「アートスフィア上黒丸」を試みている。色んなイベントがこの旧小中学校で行われるのだ。
ここ34番の受付でその「アートスフィア」の冊子も頂いたが、それを読んでみると金沢に拠点を持つ劇団「アンゲルス」の公演も10月14日(土)と10月15日(日)(ともに13時~)に行われると書かれてあった。
劇団アンゲルス、10年くらい前に知り合いが所属していたので何度か芝居を観に行ったことがある。自分としてはすごく懐かしくなった。
月の舞台で芝居するかどうかは不明だが、だとしたらシャレている。
瓶、よく見ると水が張られている
これ、日が沈んで月が空にいたら、この舞台のタイトルどおり張った水にその月が映るんじゃないだろうか。
自分には確かめようがないが、もしそうなら見てみたいものだ。
なお、こちらの満月の形をした舞台、冬には上の天板を取っ払ってしまうらしい。
このあたりは雪がすごく降って積もるからなのだが、取っ払って骨組みだけにすることで、そこだけ積もらなくなり、雪が花を咲かせたように見えるそうだ。
舞台の足元
たしかにパイプが螺旋を描くように組まれている。面白い趣向だ。
要するに、冬にもまた見に来いということですな。
また、この月の舞台のある中庭のさらに奥の方にはこんな小屋のようなものも見つけた。
小屋のようなものを発見
なんでも後日新たに展示物が増えるそうで、現在製作途中なのだとか。
もしかしたらこのブログがアップされた日にはもう出来上がって見られるかもしれない。
自分にとっては、またこの34番に来いと言うことだ。
最後に、受付があった体育館の中にも展示があった。
着物が干されている展示だ
こちらは中瀬康志氏本人ではなくその関係者(教え子さんだったかな?)の作品だそうだ。
ずっとタンスの肥やしとなっていた着物に風を通して再生する、そのための通過儀礼(イニシエーション)としての空間だそうだ。
人の形で干された着物はまるで群衆との説明書きがあった。
地元でとれた竹で干している
上から見るとさらに人っぽい
所有者の個性までも見えてきそうな展示だ。
これ、今回は着物(和服)のみだが、町の人達の普段着なども干されていたらますます個性が見えてきそうな展示になっていたんじゃないだろうか。まあそうなると通過儀礼じゃなくなるけれど…。
体育館なので間にバスケットリングも見える
さらにはキリコも
高さが伝わってくる。
次第と飛んでいるように見えてきた
ちなみに、この空間(体育館)でも「ちょんがり節」等のイベントが行われるそうだ。
冊子によれば珠洲ちょんがり保存会による公演『田植えとちょんがり踊り』が9月17日(日)の18時~19時に行われるとあった。
感想
若山エリア上黒丸地区の作品、番号で言うと34番のみであったが、情報としてはボリュームのある作品だった。
中庭の奥の展示といい、舞台や体育館での公演などといい、もう一回は足を運ばなければいけないであろう。
最後に、作品とは直接関係がないが、イモも食べさせてもらえた。
塩ゆでされたじゃがいもだ
地元珠洲の方が好意で置いていったものだそうだ。
塩ゆでと言うか、塩作りの窯で茹でたじゃがいもなのだそうだ。
NHKの連続テレビ小説『まれ』でも見られたあのじゃがいもだ。
「よかったらどうぞ」というので…
いただいた
ちょうどお腹も空いていたので助かった。
味はしっかり塩がきいていた。かといってしょっぱすぎるわけではない。
これ、美味い。ポテトチップスと同じで、何個でも食べたくなる味だ。
この頃にはもう公開終了時間の17時近くて校舎からは終わりを告げる童謡『夕焼け小焼け』が流れており、最後まで待ってお客さんが自分以外誰もいなくなったら、もう一個食べれたかもしれない。
この34番には後日、再び訪れるかもしれないので、その時もこのじゃがいもが有志で置かれていることを祈ることにする。
次回は海岸沿いにある大谷エリアの作品をいくつか紹介したいと思う。